ジョセフ・クーデルカ展


写真というものは日頃から情報の伝達や記録のツールとして身近であるせいか、あるいは私の写真に対する認識がジャーナリズムかグラフィックか程度の単純なカテゴライズしかできていなかったせいか写真展というものにほとんど興味がなかったのですが、そんな自分、反省。
ここまで詩的で、情感に訴え、力強いものなのだと、衝撃を受けてしまったわけです。
クーデルカチェコの写真家で、プラハ侵攻を撮影した作品群は秘密裡にアメリカに渡りキャパにあやかった賞を受賞していますが、今回の展覧会で最も響いたのは『ジプシーズ』というロマ、ジプシーを扱ったものでした。これは実に生命感に溢れ、圧巻です。
それに比べ亡命後、各国を渡り切り取った風景は彼の心象風景のようにどこか寂寥をともなっていました。
近年の彼はパノラマ写真を使って、枯れた大地や廃墟、波打つ海や横倒しにされ運ばれるレーニン像など、なにかの終焉を預言するような作品ばかりで、ちょっと重いな・・と。しかし、これが今、クーデルカに写る現実なのだと受け止めたいとも思ったのでした。

今回、MOMATコレクション『何かがおこっている:1907−1945の軌跡』もクーデルカ展に合わせ開催されていますが、これは現在の日本の動向を意識したキュレーションなのかもしれません。
民族や領土というものを考える昨今、クーデルカ展もこちらも今観るべきエキシビジョンと感じました。