「サラの鍵」

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)

1995年、シラク大統領が行った演説で、かつてのフランス警察が行ったユダヤ人の一斉検挙をを国家として正式に謝罪した。
この演説により、初めてその真実を知ったフランス人も少なくなく、著者もそのひとりであったという。

以前、オランダのアンネの隠れ家を訪れたことがある。
理不尽にも身を潜め、恐怖の中で暮らした当時の生活に胸を痛めた。
観光客がひしめいてはいるものの、室内のそこかしこに少女の悲劇が感じられた。

読みながらあの時の痛みを想起する。

歴史の息苦しさ、愚かさ、人間の狂気によって犠牲になった人たちの筆舌しがたい思いを想像させる作品。
また無知であること、無関心であることの罪を考える。

ユダヤ人サラと、ヴェルディヴの一斉検挙の取材からサラの人生を追う現代のジャーナリストのふたつの物語が絡み合い、重さの中にも光の差す素晴らしい作品。